創作脚本の部屋へ 作 ななみん
【キャスト】 女５・男２・他３
寺井千春
谷原麻由
佐野里保
有本紗衣
柴田先生
タカダ
タカタ
トナカイ
二号
三号
四号
明転。夕暮れの生徒会室。柴田、タカダ(inダンボール)、板付き。柴田はストレッチしている。
千春、里保、紗衣、息を切らして入ってくる。
柴田 あんたら遅かったな
千春 もう、あかん
里保 柴田先生早すぎやろ
紗衣 あーもう！ めっちゃ悔しい。先生にタッチできたら甘味バイキングなんて言うから本気出したのにぃ。
里保 さすが、アマゾネス柴田
柴田 なんて？
紗衣 なんでもありましぇん！
柴田 アタシに勝とうなんて百年早いの。
千春 百万年たっても無理な気する
里保 先生いくつでしたっけ？
柴田 永遠の十七？
紗衣 それアタシらとタメやないですか
柴田 あんたら高校生にだってまだまだ負けてへんわ。見てみ、このお肌の張りとツヤ
里保 おお…
柴田 でしょ？ 目指せ上はプラス５、下は１７からやねん
紗衣 それはまずいと思いますけど
千春 あーあ。アタシ、ケーキ屋さん行ってな。こっからここまで全部くださ〜いって言うのやってみたかったのに〜
里保 アタシ、３１でそれやりたい
紗衣 ミスドも捨てがたいな
柴田 あんたら何でもいいとは言ったけどやな、それじゃデブるで。一度ついた肉はなかなか取れへんから
紗衣 でも先生にタッチできんかったし
柴田 まぁ〜ね〜
里保 もうちょい長距離やったらいけてたかも。持久力って年と共に衰えるっていうし
柴田 年ってどういう意味や佐野
紗衣 う〜んいけたかなあ
里保 だって、校舎入ってからここまでやん
柴田 校門前からもっかいやったってもええで？
千春 いやもう勘弁してください
柴田 んも〜あんたら若いのにそんなんでええの〜ん？
紗衣 ハハハハ
柴田 まあそんな悲しまんでも、実はな…
里保 じ、実は…？
柴田 実は…あっ、そういえば谷原どうしたん？
千春 サンタ帽なおしに倉庫です
柴田 あぁそっか。そやな
里保 先生、実はって？
柴田 谷原帰ってくるまで内緒
里保 え〜
柴田 みんな揃ってから言うたるから、ちょお待っとき
里保 ん〜
紗衣 今日さ、大成功やったな
千春 ほんまなぁ
紗衣 麻由のアイディアやろ？
千春 うん。サンタ帽かぶって募金活動。ま〜慣れるまで恥ずかしかったけどな
里保 ノリノリやったくせに〜
千春 そう言う里保もやろ〜
里保 楽しかったな。来年もやりたい
紗衣 やろうや。来年も
柴田 お、次も生徒会はいるん？
千春 え、あーそっか。そうなるんか
里保 アタシ入れたらやけど入るつもりやで。千春もやろうや
千春 ん〜…紗衣は？
紗衣 アタシ？今んとこなんも考えてない
千春 やんな〜
里保 え〜アタシだけやと寂しいわ
千春 麻由どうなんやろ
紗衣 せやなあ
柴田 まあせいぜい悩み。折角若いんやかから
千春 若さ関係あります？
柴田 あるある。若いうちにな色々悩んどくねん。アタシもよう悩んだ
里保 先生が？
柴田 もちろんや。そうやってイイ女に成長していくってもんやねん
紗衣 なにに悩んでたんですか？
柴田 そうね、高校生の時といえば
千春 成績？
紗衣 テストなぁ…
里保 テストの話はせんとこ？
紗衣 せやな。ん〜進路とか
千春 あー
柴田 も〜、ぜんちゃう！ あんたら信じられへん
里保 そんな言うほどですか？
柴田 ひくわ。ありえへん。ほんまに高校生？
千春 じゃあ何の悩みやったんですか？
柴田 そりゃあ恋でしょ？
千春 し、柴田先生が、恋
里保 (魚の真似をする)
紗衣 (里保の頭をはたく)
里保 いたっ
柴田 甘酸っぱく、時にほろ苦い青春…。アタシのこの美貌で、在学中何人の男子が射止められてしまったことか
紗衣 物理的にじゃなくて？
里保 あー…一狩りいこうぜみたいな
柴田 何てぇ？
紗衣 って千春が言えって
里保 同じく
千春 アタシぃ！？
里保 先生、どんな恋してたんですか？
柴田 ん〜アタシも恋多き女やったからなぁ…クラスの委員長の本郷くん、野球部の四番バッターだった宇津井くん、気付けば意外な
一面、隣の席の南くん
千春 へぇ…
柴田 え？聞きたい？
千春 えっ？いや、別に…なぁ？(里保に)
里保 う〜ん…アタシ、それよりさっきの実はの続きが早く知りたいかな？…なぁ？(紗衣に)
紗衣 ご、ごめん…アタシ、ちょっと聞きたい
千春 え、紗衣
紗衣 だって柴田先生が高校生の時の恋やで？
柴田 んも〜しゃあないなぁ。恥ずかしいからちょっとだけやで
千春 いや先生、別に無理に言わんでも
柴田 そう…あれはちょうど今日みたいな、吐く息の白い日やった…
里保 始まってもうたで
柴田 アタシは塾の帰り、その日はチャリがパンクしてたから、とぼとぼ歩いて帰っとった。ほんなら後ろから声かけられてん
千春里保紗衣 …………。
柴田 (無言で誰かこいって手招きでサインを送る)
千春里保紗衣 (驚き、小声でアタシ？むりむり自分行きいやとなすりつけあう)
紗衣 じゃあアタシ行くわ
里保 んならアタシ行くわ
千春 (三人の視線が集まる)えぇ…や、やったらアタシ行くわ
紗衣里保 どうぞどうぞ
千春 裏切りものぉ(諦めて柴田の後ろに回る)あれ？柴田？
柴田 え、あっ、南くん
紗衣 南くん？どっかで聞いた
里保 隣の席の子や
柴田 ちゃうねん、南くんな、ヤンキー。
千春 え〜〜〜。
柴田 ヤンキーでやって。
千春 やむなく。なんかだり〜し、お、柴田やん。何してん？
柴田 塾帰りやねん
千春 へー。歩きなん？
柴田 うん。チャリ、パンクしてもうてて
千春 柴田もパンク？俺も今日してもうてん
柴田 うわー偶然やね
千春 せやな
柴田 冬ってパンクしやすいんかな
千春 さあ。そうなんかも
柴田 パンク、おそろやね
千春 ほんまやな。おそろや
柴田 嫌なおそろ
二人笑い合う。
里保 お、おぉ〜！
紗衣 千春がんばれ
柴田 学校の外で偶然出会い、さらにパンクがおそろ。これはもう運命の赤い糸が二人を引き寄せてるとしか思えへんかった
千春 そんな糸ないわ
柴田 話はこっからやねん
千春 まだあんの〜
紗衣 ファイトー
里保 がんば！
柴田 南くんこそ、どうしたん？
千春 俺？コンビニ行こうかと思って
柴田 そっか。何買うの？
千春 プリン
柴田 え、南くん、そり込み入ってるのにプリンなんて食べるん？
千春 ぷりん、ラブっす。
柴田 アタシもプリン大好き！
千春 おいしいよな
柴田 アタシ、思ってん
里保 ん？
柴田 もしかして南くん、アタシに気あるんちゃうか
里保 はい！？
紗衣 いや気あるかどうかはまだ
柴田 いやもう、そうとしか思われへん
里保 すごい自信や…
柴田 どうしよう。もしかしてこの流れで告白されるかもしれへん！そう思い悩んでいると！
千春里保紗衣 …………。
柴田 (里保、紗衣に、どっちかこいという手招き)
里保紗衣 え！？(慌てつつ、里保が紗衣を押しだす)
紗衣 あ、あれ、柴田さんやん
柴田 なんと現れたのは委員長の本郷くん！驚いていたのもつかの間。前方からやってきたのは(里保を見る)
里保 お、お、おおー。マネージャー。こんな時間になにしてんの？
柴田 や、期待の星の四番バッター宇津井くん。これは奇跡？いや、アタシって、何て罪深い女なんやろ
千春 まあ偶然やけどな
柴田 ヤンキーとガリ勉とスポーツマッチョ。アタシはいったい、誰を選べばいいのぉ〜〜！
ピンポンパンポーン。校内放送。
放送 『えー柴田先生、柴田先生。至急職員室までお越しください。もう一度繰り返します…』
柴田 あっ職員会議や
千春 えっ！？
里保 先生、はよいかな
柴田 おお、もしお前ら帰るまでに俺戻ってこんかったら、ちゃんと窓よぉーし！電気よーし！せなあかんぞ
千春 うぃっす
柴田 んならな！
柴田走ってはけていく。
千春 やっと行ったで
里保 話なが
紗衣 ナイス職員会議や
千春 結局モテた話ちゃうし
紗衣 せやな
里保 あの話の最初から最後まで柴田はモテへんかったな
紗衣 めっちゃ偶然重なったって話やったよな
千春 柴田がモテるなんて夢のまた夢ってことや。あー疲れた
里保 あっ、結局実はなんなんか聞けてない
千春 あーまたどうせ会議終わったら来るよ
紗衣 そうそう
里保 そっか。もうアタシ、気になりまくっちゃってんねん
麻由、大きなポテチの袋を抱えてでてくる。
麻由 ただ?いま
里保 あっ、麻由?
千春 おかえりー
紗衣 ありがとうなー片付け
麻由 いいよー
千春 あんな、さっき柴田がまたなんか変な事言っとってん
里保 これは運命や…
千春 サンタさんからの、ちょっと早いクリスマスプレゼントなんや…
麻由 何の話？
紗衣 なんかな、柴田先生の高校時代の恋ばな
麻由 へ?
里保 恋ばなっていうか
千春 ただ偶然クラスの女の子とめっちゃ会ったって話よな
里保 なー
紗衣 まあせやな
麻由 ちょっと聞きたかったかも
千春 えー
里保 長い上に、職員会議で話きれたからオチわからんねん
紗衣 結局どうなったんやろな
麻由 あーオチ聞けへんかったんは残念やなあ(ポテチの袋を机に置く)
千春 ポテチやー！食べていい？
麻由 これはだめ
里保 観賞用？
紗衣 観賞してどうするんよ…
里保 え…ポテチの存在を…感じ取る…？
麻由 これはな、サンタさん用やからあかんねん
千春 サンタさんが食べる用ってこと？
麻由 そうそう。捧げ物
紗衣 へ?
麻由 もし家と間違えてここ来ちゃった時も、これ置いとけばバッチリ
千春 なかなかポテチでかいな
麻由 うん。長旅で、サンタさんおなかペコペコかもしれへんやん
里保 胃もたれしそう
紗衣 健康に悪そうやな
麻由 えー
千春 普通置いとくんってあめちゃんとかちゃうん？
里保 あぁ?
麻由 うーん…まあ、お腹いっぱいにはなるやろうし
紗衣 せやな。いっか
千春 もうこいつでええわって目で、トナカイ見だしたら怖いしな
里保 それもうホラーやん
麻由 サンタさんそんなんせえへんよ
千春 トナカイもだんだん気づき始めるねん。(照明じわじわ暗くなる。千春、稲川淳二へ)最近、サンタさんの僕を見る目がなんだか
おかしいなって。最初は気のせいかなって思ってたんです。この旅は寒いし長いし大変だけど、お互いがんばろうって、言って
くれてはったし。でも虚ろにこっちを見つめてたかと思うと、突然にやりと笑ったり。そりを引いて走っている時、後ろでじゅるって
よだれを啜る音が聞こえた時にはもう僕、耐えきれなくて。ある日これ以上は無理だ、逃げ出そうって決意したんです。サンタさん
が仮眠をとってる間に、こっそり。ごめんなさいって手紙を残して、さあ行こうとサンタさんに背を向けた瞬間。ごそりと物音が
聞こえたと思うと、聞き慣れた声がしました。「プレゼントはいい子にしかあげないんだ…。自分だけ逃げ出そうなんて悪い子
には…」強張った体を無理やり動かして恐る恐る振り向くと、そこには笑ったサンタさんに握られた斧が丁度僕に向かって振り
下ろ、
麻由 わっ
里保 わあー！！
千春 うわびっくりした
里保 もう麻由！
麻由 えへ
紗衣 もうあかん絶対夢にでる
麻由 サンタさんのイメージが
里保 今日夜中トイレ行きたくなったらどうしよ
千春 とか言うことがあったらあかんから、おっきいポテチで、
タカダ入りのダンボールがガタガタ動く。
四人 ぎゃ?！
紗衣 も、もう千春?
千春 な、なによ
紗衣 これも千春のどっきりなんやろ？
麻由 なんや、そっか
里保 びっくりした
千春 …いやいやいや。アタシ、知らんで？こんなダンボール
麻由 千春が置いといたやつちゃうの？
千春 ちゃうちゃう。紗衣は？
紗衣 ちゃうで。里保、
里保 知らん知らん。昨日はなかったやんな
麻由 うん…なかった
四人 ……………。
ダンボールが再び動きだす。今度はタカダのガムテープ越しの叫び声も聞こえる。
千春麻由里保紗衣 ぎゃ?！
千春 やっ、やっぱ、やっぱあれ今勝手に動い
紗衣 てない！動いてない！
里保 紗衣現実見よう
紗衣 嫌です
麻由 案外、猫とかちゃう？
千春 麻由?？猫ちゃうでしょ?？
里保 猫ちゃんやったらだしてあげなやけど…
紗衣 いやいやいや絶対猫ちゃうやろ
千春 もしのもしのもし、あの中身が猫やったとしても、なんか叫び声みたいに鳴く猫やで？嫌すぎる
麻由 でもこのままも怖いし…
里保 誰かがあけないと
千春 無理無理無理。アタシこういうのほんま無理
里保 紗衣よろしく
紗衣 無理無理無理無理無理
麻由 大丈夫、紗衣。猫やって猫
紗衣 嫌や！じゃあ麻由いく？
麻由 アタシ、ほら、猫アレルギーやから
紗衣 初耳や…
里保 千春が怖い話するから、召喚されちゃったんちゃう
千春 えっなにを
里保 トナカイの怨念？
四人 …………ひ?
千春 なんまんだー
紗衣 塩、塩蒔こう
里保 塩蒔いてももうすぐそこにいるんやで！？
紗衣 いるとかやめてや！
麻由 やっぱ、開けよう
千春 誰が？
麻由 やっぱここは公平に、じゃんけんやろ
四人集まって、各々が精神統一したのちじゃんけん。何回かあいこして、結局負けるのは紗衣。
紗衣 う、うわああ
里保 紗衣…さよなら…(紗衣に敬礼)
千春 さよなら…紗衣…(紗衣に敬礼)
紗衣 もう帰ってこない扱いやめて！？
千春 アタシ、紗衣のこと忘れへん
里保 アタシも、立派な人やったってしっかり記憶に刻んどくから
紗衣 うう…アタシもみんなのこと、忘れへんで…
千春 大丈夫、紗衣を見捨てて逃げたりしいひん
紗衣 ち、千春…
里保 もちろんや。ただ一定の！一定の距離だけとらして！逃げへんから！
紗衣 あぁ…そのちょっとの距離が今は何万キロにも見える…
麻由 えいっ(ダンボールのガムテープを一気にはがす)
千春里保紗衣 え?！？
ダンボールからモゾモゾ、キョロキョロしながら転がりでてくるタカダ。両手両足がガムテープで
ぐるぐる巻き。
四人 うわあー！
女の子四人固まって、タカダと距離をとる。
千春 え、だ、誰？
タカダ (喋れないってガムテープアピール)
里保 あっ、ガムテープ
紗衣 なんか、ぐるっぐる巻きやな
女の子達顔を見合わせて、みんなでタカダのガムテープをはがす。
タカダ ほ、ほんまにありがとぉ?
里保 いいえぇ
タカダ おねえちゃんらが助けてくれんかったら、箱詰めのまま昆陽池に沈んどったかもしれへん。ほんまもう、ありがとぉ
千春 昆陽池って…
麻由 よくドラマで見る、東京湾に沈めたろかぃ！のご近所バージョンやね
紗衣 それってヤク…
千春 あーあー！あの、何でダンボールに入れられてたんですか？
タカダ それは、今思い出しても恐ろしいんやけどな。ブルブルブルブル
里保 ほうほう。あ、アタシ佐野里保ー
タカダ おー。せやな。名前まだ知らんかったな。わし、タカダ言います。まあ日本のジョニーデップって呼んでくれてもええで
里保 タカダさん、あれが寺井千春
千春 どうも?タカダさん
里保 谷原麻由
麻由 はーい、私です。タカダさん
里保 ほんで有本紗衣
紗衣 よろしくお願いします、タカダさん
タカダ 誰もジョニーとは呼んでくれへんねんな
千春 タカダさん？
里保 タカダさん？
麻由 タカダさん？
紗衣 タカダさん！
タカダ いや！ええねん！ええねん。忘れて。それより、ほんまにこの度は助けてくれてありがとぉ
千春 恐ろしいって、何があったん？
タカダ 誰にも言わんとってくれる？
紗衣 もちろん
タカダ わしな、実は訳ありでな
麻由 ダンボール詰めにされとったしなぁ
里保 事件の香りや
タカダ でもサツには連絡せんといてな
千春 えっ、でも
タカダ 訳あり、やから
四人顔を見合わせる。タカダは周りに人の気配がないか確認。
タカダ わし、今とある組織に追われてるねん
里保 とある組織？
タカダ (里保にけつかみで)しー！静かに！奴らに気づかれてまう！
千春 タカダさんが一番うるさい
タカダ ご、ごめん
麻由 なんでその、とある組織に追われてるんですか？
タカダ わし、組織から逃げ出してきてん
里保 つまり、けじめつけんかいワレェってやつやね
千春 ほんで捕まったんか
タカダ ちゃう！組織やない。あいつに、あいつに捕まってん！
紗衣 あいつ？
タカダ せや、思い出した。わしはあいつに捕まってダンボールに…ブルブルブルブル
里保 組織ちゃうの？
タカダ 組織のやつやけど、あいつは集団に縛られるような奴じゃないねん。個人的にわしを追ってたんや
千春 タカダさん、組織とそのあいつとダブルで追われてんの？
紗衣 追われまくりやな
タカダ あいつは、わしの唯一無二の相棒やった。まさかあいつが…ブルブル
麻由 なんか恨まれるような心当たりは？
タカダ そんなんないよ
千春 なんか些細な事でもさ
タカダ うーん…あいつの鼻、おもろいからめっちゃからかった事とか？
紗衣 えー、人のコンプレックスからかったらあかんわ
タカダ だってめっちゃおもろいねんもん
千春 本人は本気で気にしてるかもしれへんねんで
タカダ でもあれやで？からかったって言うても、通りすがる時に鼻ピコーンって言ったくらいやで？
紗衣 しょうもな
タカダ せやろ？毎回言うてる訳ちゃうし。こんなんでキレるとか
紗衣 ちゃうよタカダさんが
タカダ わしぃ？
里保 どんな時に鼻ピコーンって言うてるん？
タカダ まあ主にあいつが女の子と居る時やな。わざと何回もすれ違って、ピコンピコンピコーン
里保 うわぁ
麻由 悪質
千春 他は？
タカダ うーん…でもこんなんでキレるやろか
紗衣 とりあえず聞かして
タカダ あいつの仕事終わりの楽しみの480円のプリン、買う度根こそぎ食うたったり
里保 そりゃキレるわ！
タカダ な、なんでや
里保 当たり前やろ、なぁ麻由！
麻由 うん！食べ物の恨み…ましてやプリン！
里保 もうタカダさん、そのあいつに引き渡した方がええんちゃう？
麻由 そうかもしれへんな
タカダ そんな、待ってや。捨てんといて
紗衣 まぁ知り合ったのも何かの縁やし、それはやめとったろ
タカダ 紗衣ちゃんの言う通りや
里保 二度と人のプリン食べへんって誓う？
タカダ 誓う誓う。アーメン
千春 いつどこで捕まったん？
タカダ 昨日の夜中。川原で突然。あ、あいつやって思った瞬間に…うぅ、ブルブル
麻由 それで、なんで生徒会室におったんやろ
紗衣 なんでなんやろなぁ
タカダ そんなん何でもどうでもええ。助かってんから
紗衣 まあ外よりは安全やろな
タカダ 逃亡生活も疲れたし、ちょっと間ここで休憩してってもええ？
里保 いいよー
千春 いいけど、その後はどうすんの？
タカダ 大丈夫。昨日逃げるあてついてん
麻由 逃げるあてついたとこで、捕まったんやね
タカダ そやねん。だからついてないなぁと思っててんけど、まだそんなことないみたいや
紗衣 タカダさん悪運強そうやしな
タカダ せやろ？でも一日ダンボールで疲れたから、ちょっと間だけ
千春 うん。わかった
タカダ はぁ。安心したらおトイレ行きたなってきたわ
里保 トイレやったら、廊下でて右に真っ直ぐ行ったらあるで
タカダ ちょっと借りてもええ？
千春 うーん、先生とかに見つかったらめんどくさいよなぁ
タカダ あかん。一回行きたいと思ってもうたら、もうめっちゃ行きたい
紗衣 えっ、ちょっと待って
タカダ む、無理や、待たれへん。もう、コンコン、ええですか？ってノックしとる
里保 ここでとかやめてや！？
タカダ そりゃわしかて、したくてする訳ちゃうけど
麻由 千春、どうする
千春 あのさ、来客の人が首から下げるやつどっかなかったっけ
麻由 あーあったあった
千春 どこやったっけ
千春、麻由は探し物。紗衣と里保はタカダを励ます。
タカダ トイレ?
千春 待って！もうちょいがんばって！
タカダ もう無理?
紗衣 タカダさんならいける！ひっこめて！
タカダ そんな無茶な
里保 タカダさん、ひっひっふー
里保タカダ ひっひっふー
紗衣 逆や！
麻由 あ、これ、これかけていったら？(お花の形をしたやつをかばんから取り出して、タカダの首にかける)
タカダ ええ？行ってもええ？
千春 もうなんでもええや、大丈夫やろ！
紗衣 行ってらっしゃい！
タカダ でて左やっけ。右？真っ直ぐ？(よろよろと下手に向かって歩き出す)
里保 右やで、右
タカダ わかった。ありがとぉ?
タカダ下手にはける。
千春 間に合うやろか
紗衣 麻由、あれなに？
麻由 来週ピカピカコンテストしようって言ってたやん
千春 教室掃除にランキングつけるやつ？
麻由 そう。その一位のクラス用に作ったやつ
里保 えっ、それかけたん？
麻由 それしかなかってんもん
紗衣 まあ何もせんよりましやろ
麻由 やんなっ
千春 何かさ、大変な事なっちゃった？
里保 なにが？
千春 なんか全体的に
麻由 ええやん。タカダさんおもろいし
紗衣 悪い人じゃなさそうよな
里保 でもさ、とある組織やって
千春 どんなんやろ
紗衣 (千春にぶつかりに行く)いったぁー！骨折れてもうたー！
麻由この間移動して隠れておく。
里保 ア、アニキ！おいねぇちゃん、アニキの肩どないしてくれんねん
千春 そっちがぶつかったんじゃ…
紗衣 痛いわー！めっちゃ痛いわー。心が痛いわ
里保 おいねぇちゃんが変な言いがかりつけるから、アニキの心が痛んでもうたやないかい
千春 ご、ごめんなさい
里保 ごめんですんだら警察いらんねん
千春 そんなっ、私、どうすれば
里保 落とし前、つけてもらうでぇ
千春 お助け?
麻由 そこまでだ！
里保紗衣 こ、この声は！
麻由 (物影から飛び出す)手を上げろ！バンバンバン
里保 や、やられたー(倒れる)
紗衣 手上げる前に撃つとは…ガクッ(倒れる)
麻由 またつまらぬものを撃ってもうた
千春 あっ、ありがとうございます
麻由 お礼なんていいねん。悪いやつには気ぃつけなあかんで
千春 はい…！
麻由 じゃあ
千春 待って！せめてお名前を
麻由 名乗るほどの者じゃありませんよ
千春 きゅん！
紗衣 (生き返る)ちょっと待って麻由？
里保 (生き返る)なんかかっこいいのんずるいわー
麻由 えへ。でもこういう組織かもしれんやろ？
千春 ほんまにそういうのやったらええけどな
紗衣 怖い事言わんとってよ
千春 あはは
麻由 でももう、タカダさんと知り合っちゃったし
紗衣 うん
里保 麻由ーおなかすいた
麻由 ポテチはだめー
里保 えー
麻由 サンタさんへの捧げ物やの
里保 ほんとに居らへんサンタさんより、ほんとに居る里保に捧げよう
麻由 居るよぉサンタさん
里保 里保のが居るよ
麻由 サンタさんも居る
里保 議長！議長！
千春 静粛に！えーでは、第…何回目。生徒会会議を始めます。(みんな席につく)副議長！議題を
紗衣 はい。今日の議題は、『サンタさんは実在するのか』
麻由 居ます！
千春 発言は挙手してからでお願いします！
麻由 はいっ！(手を上げる)
千春 はい谷原さん！
麻由 はい。私は、サンタさんは居ると思います
里保 異議あり！(手を上げる)
千春 はい佐野さん！
里保 はいっ。私は居ないと思います！
麻由 異議あり！
千春 ストップ！ここで、副議長の有本さんの意見を聞いてみましょう。有本さん、いかがですか？
紗衣 うーん…もし居たら楽しいですよね
麻由 ですよね！
里保 でも居ないですよね！
麻由 居るしぃー
里保 居ないしぃー
紗衣 まぁまぁ
麻由 世界は広いねんで。どっかには居るって
里保 えー
麻由 千春はどう思う？
千春 えっアタシ？
麻由 うん
千春 アタシは?…居ったほうがええなとは思うけど
麻由 やんねっ
千春 でも実際に居るかって言われると
麻由 えー
里保 ほらほら。実際に居ったら不法侵入で捕まるもん
麻由 ん?絶対居んのになぁ
里保 なんでそんな自信あるんよー
麻由 だってアタシ会ったことあるもん
千春 えっ。サンタさん？
麻由 うん。ちっちゃい時
里保 お父さんとかが変装してたんちゃう
麻由 ちゃうよー。本物
紗衣 あのさぁ、話変わるけど、タカダさん遅ない？
里保 ほんまやな
麻由 迷子かな
紗衣 先生とかに見つかったらどうしよ
千春 それはやばいな
里保 アタシ、見に行ってくるわ
麻由 あ、アタシも行く
里保 いこいこ
紗衣 ありがとう
里保 いってきまー
麻由 いってきまー
千春 いってらー
里保、麻由下手にはける。
紗衣 タカダさん、無事やったらええけど
千春 うん
紗衣 千春さ、どう思う？
千春 何が？
紗衣 サンタさん
つづく…
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