創作脚本の部屋へ 作 メルト 潤色 ごのい
【キャスト】女９ 男３
納田真琴 まこと 女
藤田穂香 ほのか 女
大西泉美 いづみ 女
別府智子 ともこ 女
小西充樹 みつき 女
吉村裕羽 ゆう 男
藤森大樹 だいき 男
石田冬悟 とうご 男
ゆきちゃん ゆう君の妹
みきちゃん 大ちゃんの妹
姉 大ちゃんのお姉さま
委員長 いきり厨２女子委員長
Special Thanks
○×先生（あなたの学校で一番怖くて愛がある先生にお願いしましょう）
『オープニング』
コンクリートで出来た無機質な空間。所々に空調の配管が走っているのがみえる。
そこにロッカー、机、脚立などが並ぶ物置的空間。よく見ると人形、毛布など、
ふさわしくない者達が隠れている。屋上へ続く決して開かない扉があり、そこからは
鉄格子の窓枠をすり抜けた光が薄暗い空間に滑り込んできている。不良高校生の
たまり場か？ 真琴、穂香、泉美、智子、大樹、冬悟の６人の姿が見える。
オープニングはなんちゃってロックコンサート。ピストルズの曲に合わせて替え歌
コンサート。ボーカルはもちろん泉美ちゃん。
ここの歌詞、曲などお任せ。初演はSex Pistolsの替え歌。
現状への不満と未来への不安を精一杯ぶちかまし笑い飛ばす歌
泉美 ワーンマン、ラーィブさぁ～
ライッ！ にゃ～ぉおおお（笑）
バイバイ しがらみ ナンバーワン
Ａメロ１
お先短い 奴じゃベイベ、話にゃナラねぇ てめえバイ！
いのち短し 萌えよいえ～い
あ、皆デストロイ そい つが アタ イさ
あぁ～～いむ あいむばっが～る あいむばっが～る
Ａメロ２
いい子にしてりゃこの先ぃ、なんとかなるのはマヤカシ
あ たしゃ 知っ てんだぁ この 星 は
大人たちにもう 食い 尽く され てる
あぁ～～いむ あいむばっが～る あいむばっが～る
間奏
へいふぁっきゅーふぁっくみー!!!!!←掛け声など随時募集中
演奏が終わり、観客の歓声に応えるみんな。ところがある男の登場により
その熱気はウソのように消し飛んだ。
裕羽 おい！！！セブイレの唐揚げ半額なってたぞ！
『日常セットアップ』
裕羽の登場と共に明るくなる舞台。最上階の踊り場・兼物置。みんなはせっかくの
ノリをいとも軽々と消し飛ばしてくれた裕羽に凍り付く。
全員 おい！
裕羽 （やっとビックリして）何よ？
大樹 空気読めやぁあ。裕羽。
裕羽 え？ あ、ごめん。なんかかっこいいバンドごっこしてた？
泉美 せっかくウチらが踊り場ゲリラライブごっこしとったのに。
裕羽 泉美や大樹は分かるけど、冬悟や智子ちゃんも？
智子 なんか今日はみんなと騒いでみたい気分やったからサブボーカルって事で。で、冬悟君が。
冬悟 ドラムっす。机やけど？
泉美 そこそこええ感じよ。
裕羽 ええ？ 真琴や穂香ちゃんまで？
大樹 当たり前ヤン。真琴なんかベースやぞ。ほうき持って「んぺんぺ」言うてノリノリやってんから。もっぺん
見せたれ。
泉美 ♪君のハートに（冬悟バスドラ：ずんずん）ベースソロ
真琴 「んぺんぺ、」
大樹 「ばばばば、ばばば…」
冬悟 「ずんずん、たった…」
間。
真琴 なんか恥ずかしくなってきた。
泉美 そこだけやらすからじゃ。まこちん、自信持て。
裕羽 穂香ちゃんは？
穂香 なんちゃってキーボード。
冬悟 机やから。
裕羽 あぁ～、似合ってるよ。うん。
穂香 なぁ、裕羽君今日の補習行く？
裕羽 どれ？
穂香 古典と数Ｂ。どっち行こうか迷ってんねん
裕羽 俺今日はめんどいからどっちも行かんわ。明日の英語は行くで。
穂香 そっか、私英語は得意やしなー。どないしよ、
泉美 だぁああもぉおおお。
裕羽 なんやねんな。
泉美 賢い話せんといてよ！！
裕羽 何処に賢い要素あってん。
泉美 いづみはな、明日数Ⅱ行くで。
裕羽 補充やろ、強制参加の方やろ。
智子 まあね。
泉美 がっくし。
真琴 ちょっと。ゆう君。
裕羽 なんでっかー。
真琴 あたしセブイレの唐揚げ好きやねんな。
裕羽 なんでこのタイミングで誰もが承知の事実告白したん？
真琴 めっさすきやねん。
裕羽 うん、で？
真琴 かってこいや。
裕羽 自分で行けや。
真琴 あんなー裕羽こないだなー３組の内むｒ…
裕羽 ちょちょそれあかんやつですやん、がちのやつですやん。
真琴 あたしセブイレの唐揚げすきやねん。
裕羽 …放課後な。
真琴 やった、ありがとう、３組の内村に振られたゆう君！
裕羽 だからそれは誤解やって…。
泉美 まじかよ。
智子 え、何のこと？
泉美 智ちゃんは知らん方がええこと。
裕羽 一気に人間不信になった。
穂香 かわいそうに、まこちゃんひどいよー
裕羽 穂香ちゃんが天使に見える。
穂香 ゆう君かわいそうに。（笑）
裕羽 今悪魔が見えてんけど。
真琴 智子よ、次の授業なに？
裕羽 おい、俺にフォロー入れろや。
真琴 ドンマイドンマイで、何？
智子 あーライティングや。
裕羽 しばいたろか。
真琴 みさきちゃんの事も言うたろか？
裕羽 ごめん。俺が悪かった。
真琴 で、らいてんぐ何単位やったっけ？
智子 ４。
真琴 余裕やな、さぼっちゃお。
裕羽 文系ライティング４単位もあるんや。
大樹 あるアルよ。
裕羽 めっさ書かすやん。
穂香 理系２単位やで。
真琴 休まれへんやん。
冬悟 ４単位でも休まれへんやろ、ほれ、昼休みおわんで。
泉美 いづみは次ちひろの授業やからいくで！ まこちゃんも行こー。
真琴 いやいや、お前がちひろでもあたしるみ子やし。るみちゃんやし。
泉美 いーやん、るみちゃんなにげスタイルいいやん。
真琴 るみ子のスタイルがよくてもあたしになんの有益もないからな。
智子 うち行くで。
真琴 置いていかんといてぇえーあたしともちんいないと生きて行けないーわー。
大樹 出たで、真琴の智子依存。
真琴 だってぇー智子いないとノート写させてくれる人いなうぃすぃー。
智子 うっざ。
真琴 だから置いて行かないで、一緒にサボタージュとか、いかがですかね？
智子 ライオンはな、わが子を崖から突き落とすねんで。
走って逃げる智子ちゃん。
真琴 おかぁあああちゃぁああん。
泉美 待ってけろーいづみも一緒に行くー
追いかける２人。
大樹 冬悟、次の授業なんぞや？
冬悟 世界史ぞや。
大樹 何単位ぞや？
冬悟 ３ぞや。
大樹 余裕？
冬悟 ないよね、お前こないだ１２回欠席っていわれてたよね、まだ２学期だよね。
大樹 うわぁあああん現実のばかやらう！
走り去る冬悟と追いかける大樹。
穂香 お次の授業はなんですか裕羽さん？
裕羽 化学です。
チャイムの音。
穂香 あ。
裕羽 穂香ちゃん次何？
穂香 物理。
裕羽 物理とってたんや。
穂香 うん、他の科目がなんか面白くなさそやったから。
裕羽 そんな決め方したん？
穂香 興味ない勉強なんかやってもおもんないやん。
裕羽 勉強自体に興味ないねんけど。
穂香 まぁ私もそーやけど。
裕羽 授業、行かへんの？
穂香 たまにはこゆのもいーかなーな、んて。
裕羽 ほな、俺もご一緒させて下さいな。
穂香 反抗期やな。
裕羽 高校生やしな！
穂香 なんかどきどきしてきたー！ 何する？
裕羽 確か大ちゃんが持ってきたトランプがここにあるはずやでー…
『妹’ｓ』
ロッカーをあけるゆう君。そこには直立不動のゆう妹。急いで物凄い勢いで
ロッカーを閉めるゆう君。
穂香 びっくりしたぁーどしたん？
裕羽 ん、んんあああん、あ、なんもないよ。
そっともう一度ロッカーを開けるゆう。そこには変わらない現実。
ゆき おにいちゃん。
裕羽 お前、何してんねん。
ゆき 挟まった。助けて。
裕羽 どないしてはいったん。
ゆき 説明するからとりあえず出して、助けて。
我が妹を引きずり出すゆう君。
穂香 どこからぁあああ！？
裕羽 ここ。（ロッカー指差す）
穂香 なんでぇえ、え、なんでぇええ？
ゆき おどろかそおもてみんな開けてくれるかなと思って隠れてたのに誰も開けてくれへんし。出るタイミングのがして。
裕羽 なんかごめんな。
ゆき チャイムとか鳴ったし、今更授業戻り辛いし。
裕羽 こんな狭いとこどないしてはいったん？
ゆき こないして。
ロッカーに入り込む妹
ゆき あ、挟まったわ。助けて。
静かにロッカーを閉める裕羽。
ゆき おにいいいいいいちゃぁあああんんん
裕羽 トランプどこかな？
もう一つのロッカーをあけようと手をかけるけど、停止するゆうくん。
裕羽 俺の妹な、大ちゃんの妹とめっちゃ仲いいねん。
恐る恐るロッカーを開けてみると不動のみきちゃん。しっかり確認して元通り閉める。
裕羽 やっぱりかぁあ。
穂香 なにごと？
みき もっとはよあけろや。
裕羽 授業もどれや。
みき 戻してくれや！ はさまっとんねん！ そんなんもわからんのか！ ぼけか！
ゆき （内側からドンドン叩いて）おにいいいちゃあああああんん。
裕羽 静かにしろやぁあ先生来るやろ！
ゆき じゃあ出してくれや！！ 静かにして欲しかったら助け出してくれや！！！
裕羽 ちょっと待てよ…、ちょっと穂香ちゃん俺の妹出したってくれへん？
穂香 うん。
それぞれ妹ズを救出する２人。大惨事。
みき ありがとうゆう君。
裕羽 くっそなんか可愛いぞ。
穂香 あのさ、ロッカーもう一個あんねんけど。
裕羽 うそん。
穂香 いや、そうやと思うけど念のため。二度あることは？
裕羽 三度ある。なんか涙出てきた。行くで。
恐る恐る最後のロッカーを開ける二人。中にいたのは校務員の羽場根さん。
穂香 （思わず）きゃ！
羽場根 何か？
裕羽 いえ。すんません。
羽場根 今度からあれよ、ちゃんとノックしてね。おっちゃん忙しいねんから。
穂香 はい。
羽場根 ほな、おっちゃん雨漏り直しに行かなあかんから。
ゆき ばいばい。
羽場根 …。
裕羽 あ、すいません。言葉使い教えときますから。
羽場根 頼むよ。
そう言うと午後の現場に旅立っていく羽場根さん。あっけに取られている四人。
みき おっちゃん、ばいばい。
裕羽 こら、お疲れ様です。
ゆき お疲れっす。
穂香 さ、おっちゃんも仕事行ったし、あんたらもはよ教室戻り。
みき もうチャイム鳴ったしーめんどくさいしーここおらしてや。
穂香 あかんー、高校は中学と違って厳しいねんで。
ゆき 中学より自由やんかー。
穂香 自由やからこそ厳しいねん、それが分ってないうちは真面目に授業受けとき。
ゆき 意味分からんし。
みき ゆう君といちゃいちゃしたいんやろ！！
穂香 ちがいますー。
ゆき ほなここで勉強するからおらしてや。
穂香 そんなもんだいちゃうの。
裕羽 しゃあないなぁホンマ。これ、やるから。一個ずつやぞ。
顔を見合わせて裕羽が差し出した唐揚げを一個ずつ食べるゆきとみき。
裕羽 それ食ったら教室行け。ええな。
ゆき いいし保健室行くし
みき 行こ！
裕羽 お前ら十分元気やん。
ぱたぱたはける妹達
『夢と代償』
裕羽 ちゃんと授業受けーやー。
穂香 大丈夫かな。
裕羽 最近反抗期やねん、トランプほんまどこ置いたっけなー。
穂香 いいなー裕羽君みたいなお兄ちゃん優しそうで。
裕羽 喧嘩ばっかりやで。
穂香 いいやん。私ひとりっこやから、唐揚げくれるようなお兄ちゃん羨ましい。
裕羽 え、穂香ちゃんも欲しかったん、これ。
穂香 うううん。そういう意味ちゃうねん。
裕羽 そっか。お兄ちゃんうらやましい言うても大ちゃんみたいなお兄ちゃんやったらどうする？
穂香 それはちょっと考えるかも。
裕羽 やんな。
穂香 でもだいちゃんかっこいいよな。
裕羽 え、どこが？
穂香 だいちゃんの夢。知らんの？
裕羽 しらん、あんな能天気に夢なんかあったん。
穂香 泉美ちゃんをな、自分のギターで世界一のロック歌手にすんねんて。
裕羽 うわ、なにそれ。
穂香 なんかかっこよくない？ 泉美ちゃんを、ってのがまた。
裕羽 まぁ…、夢は多少かゆくても、でかいほうが良いですわね。夢があって。
穂香 ああやって夢語れるって凄いと思う。かっこいい。
裕羽 穂香ちゃんは？
穂香 ん？
裕羽 ないの？ 語れる夢。
穂香 …ない、かな。大ちゃんみたいにああやって堂々と言える夢は。
裕羽 どゆこと？
穂香 だいちゃんはさ、中学の時から泉美ちゃんとバンド組んでてんて。
裕羽 らしいな、
穂香 だからあんなカッコいい事言えるねん、あたしは、ただの一般人やもん、身にあわん大きな夢なんか語って
も…、
裕羽 だいちゃんだって一般人やん。
穂香 なら、あたしはもっと一般人。そもそもあたしなんかには大きすぎるねんって、だいちゃんはさ。
裕羽 俺、大ちゃんじゃなくて穂香ちゃんの話聞きたい。
穂香 え？
裕羽 自分の将来語ってる方がかっこいいよ、だからあんな大ちゃんがかっこよく見えてんて。
穂香 でも、
裕羽 ほら、たまには真面目な話、しよ。みんなおったらうるさくてこんなゆっくり語られへんやん、ささ、おいで。
じぶんが座ってる机かなんかに誘導する裕羽君。
穂香 なんか今日はゆう君と初体験多いな。
裕羽 誤解されるような言い方やめて下さるかしら…。
穂香 私な、女優になりたかってん。
裕羽 かった？
穂香 諦めた。才能がないし。
裕羽 そんなん、わからんやん。
穂香 分るよ。中学のときな、演劇部に入って、痛感した。
裕羽 そんなん、ほら、練習とか、努力でさ…、
穂香 どうにかなるかも知れへんけど、努力なんかじゃ補われへん部分なんかいっぱいあるし、第一私は、努力したくてもさ。できひん、し。
裕羽 穂香ちゃんなら大丈夫やって！
穂香 精神が耐えれたって体が耐えられへんもん。体力がいるねんで、女優。私体弱いし。
裕羽 でもさ…、
穂香 私が頑張って有名になれば、私みたいに体弱いとかで夢諦めてる子の希望になれると思ってた。
裕羽 なれるよ、穂香ちゃんなら！
穂香 無理やって。
裕羽 この年で人生守りに入ってどないするん！やってみなわからんやん！
穂香 分るよ。この年やからこそ。もう中学生じゃないないねんから。
裕羽 自分の可能性信じてみな…、
穂香 ううん。いいねん。あたしこないだ進路希望、就職第一希望にしたし。はい、おわり！トランプさがそ！
裕羽 大学、行かんの？
穂香 あ、こんなんあるで、誰が持ってきたんやろか。
裕羽 俺さ、見てもーてん。
穂香 これ誰のやろ？ 智子ちゃんかな。
裕羽 穂香ちゃんさ、進路希望の紙図書室で書いたやろ。
穂香 泉ちゃんも結構こんな可愛い人形とか好きやんなー。
裕羽 ほんまは演劇科ある大学、第一に書く気やったんやろ。
裕羽君の発言の度に穂香ちゃんの笑顔がだんだん曇って行く。
裕羽 俺も、あの日図書室おってんやん。
穂香 …、辛いねんな。可能性信じるん。
やっと息が出来るようになったかのように大きく息を吸う穂香ちゃん。
穂香 結局な、自分が楽な道選んで、簡単に捨てれるような夢やってん。
裕羽 簡単に捨てれるなら、泣いたりせーへんやろ。
穂香 やめよ、ほんまに！ほら、折角の青春を謳歌しようよ！
裕羽 自分の将来やろ、もっと、
穂香 考えてるよ、考えたから、出した答えやねんって。もう疲れてん考えんの。ほんま、やめよ。
裕羽 誰だって最初は不安やし、身の程知らずやって言われるかもしれへんけどさ！ どんな成功者も、身の程
知らずから始まったとおもうで！ 穂香ちゃんが信じんくても、俺は信じるで！ 穂香ちゃんの可能性！
真顔で恥ずかしげもなくドラマみたいなこと言う裕羽、きょとんとする穂香ちゃん、
次第にうつむく。
穂香 私一人っ子やねん。親になにかあったら私しかどうもしてあげられへんねん、自分がしんどいのはいくらでも
耐えれる、好きなことやってるんやもん。けど、そんな不安定な収入で、大切な人守れる？ 他人事やから
言えるねん。そうやって、変に勇気付けたり。折角勇気出して諦めたのに。また信じたくなる。その人のため
おもって言うたことば。逆に追い込んでるねん。
泣きそうな声、とは裏腹に息を大きく吸って上げた穂香の顔は笑顔。
穂香 でも。ゆう君のそうやって、恥ずかしげもなく誰かを勇気付けれる言葉言えるとこ、好き。
裕羽 俺自身じゃないんや。（苦笑）
穂香 恥ずかしいけど、ちょっとすっきりした、実はな、誰かに言いたかってんな。言えただけですっきりした。
ありがとう。
裕羽 ならよかった。
見上げた視線の向こう、屋上へ続く階段で見つけた。トランプ。
穂香 あ。
裕羽 （振り返って）あ。
トランプを手に取る裕羽。二人は顔を見合わせクスッと笑った。暗転。
『昼ドラ？ごっこ』
薄暗くなる照明。わらわらみんなが戻ってくる。楽しげにブル転みたいなノリ。
でもなんか空気がおかしい。
泉美 この猫泥棒！
智子 こうするしかなかったんだもの！ 私達は愛し合ってるの！
冬悟 そうだそうだー
泉美 ちょっと！ なに猫泥棒の味方してんのよ！
冬悟 お前最近うぜーもん
泉美 なんです…て、
智子 どう？ これで分かったでしょ。あなた捨てられたのよ。
泉美 言わせておけば。殺してやる。
智子 殺れるもんなら殺ってごらんなさい。
そこへ上下からそれぞれ穂香、大樹登場。
穂香 ちょっと。あたしはどうなるのよ。
冬悟 げ、きてたのかよ
穂香 あの時の愛してるはうそだったの？
大樹 そーゆーおまえこそ。俺はどうなんのかなー。
穂香 いた…の？
智子 何この人間模様？
泉美 複雑すぎていづみついて行けない。
冬悟 人間皆兄妹。
泉美 そういう問題じゃないのよ！
大樹 他に男居るとか聞いてないんだけど。
智子 こんな浮気女やめてあたしにするべきよ！
泉美 触らないでよ猫泥棒！！
智子 猫は盗んでません！
そこへ駆け込んできた裕羽。
裕羽 大ちゃん！！
大樹 ゆう！！
裕羽 だれ？ その女。
穂香 え
大樹 ただの遊びだよ。本命はお前だけだよ。
穂香 どういうことよ！ 女はお前だけだっていってたじゃない！
大樹 女は、な。
穂香 きぃいいー（ハンカチ噛む）
裕羽 大ちゃん！！
大樹 ゆう！！
『姉登場』
むさい熱烈なハグ。そこにタイミング良く大ちゃん姉登場。固まる空気。
姉 おねぇちゃんは悲しい！！
泉美 あ、大ちゃんねーね。
姉 いつからや？ 言うてみ？おねえちゃんはな、大樹がそーゆーの、で悲しいんちゃうんやで。
大樹 はぁ？
姉 黙ってた事が悲しいねん！ なんで相談してくれへんかったん！ 家族やろ！？
裕羽 大ちゃんねえちゃん、違うねん…。
姉 ごろう君！
裕羽 ゆうです、
姉 この子、性格だけは良い子やねん、だから、きっと幸せになれる、
大樹 人の話きけや
姉 冬悟君は関係ないやろ！黙っといて奥二重！
大樹 大樹ですけど！？ 自分の弟忘れんなや。
冬悟 なんで俺がこんなダメージ受けなあかんねん
智子 みんなで昼ドラごっこしてただけやで、大丈夫、大ちゃんは相当女癖悪いです。
姉 ふぇ？そうなん？ なら安心やねんけど…、
裕羽 弟の女癖が悪くて安心ってどうよ…。
智子 うん、こないだなんか６組の神山って子軽いから扱いやすいわゆーてたもん
泉美 がちでドン引きやねんけど。
大樹 リアルな反応って傷つくよな。
智子 で、何しにきたん？
姉 大樹にデートのお誘いをば。
大樹 別に俺そーゆー趣味も無いねんけど…。
姉 このナイスバデーを見て言うか！ ちとは発情しろよ！ 年頃やろ！
大樹 ごめん。間に合ってるねん。神山もおるしな、
姉 お姉ちゃん悲しい！
大樹 分ったからさっさ帰れよ、俺泉美とバンドの練習するから。
泉美 そろそろレパートリー増やしたくなくなくない？
大樹 んな、今回もピストルズってことで！
泉美 えーピストルズほとんどこぴったやんー
大樹 アレンジしようぜ、オリジナルアレンジかっこいくね？
泉美 そーゆーの絶対失敗するねんって、
大樹 大丈夫、俺を信じろ、（どや
姉 はいはーい、しゅうごーう、姉ちゃんをはみごにしないー
泉美 女ばっか追いかけてる奴のなにを信じろと！
大樹 腕？
姉 無視ですかーお姉ちゃん怒るよ？ いいの？言っとくけど１個上だからね？ あたし先輩だからね？
泉美 一般人の。しかも学生なんかが、信じれる腕なんか持ってるわけなかろー！
大樹 いいし、一人でやるし、泉なんかが歌ってくれんでも俺歌えるし。ふん。
姉 もー怒ったで、１８歳怒らせたら怖いで！せっかくバイト代入ったから奢ったろおもたのに、もう怒ったで！
大樹 （同時に）ゴメン。おれが悪かった
泉美 （同時に）ごめん。いづみが悪かった。
姉 くっそ。お前ら、
裕羽 俺マクド行きたい
穂香 えー折角やから高いほうがいいなモス行こ
冬悟 腹減ったからさー回転寿司でどーよ
姉 勝手に行けよ、あたしゃ大樹とデートなんやから！
大樹 智子もおいでや、
姉 なぁ、あんた日本語わかる？ あ、きこえへんかったんかな。大樹とデートや、ゆーたやん？ いつ友達も連れて
ゆくゆーた？ん？
智子 どこ行くん？
大樹 ガスト、ねぇちゃんのおごり。
姉 ごめんな、１７年気づいてあげれんくて、日本語分らんねんな、
智子 行く行く！
姉 無理やゆーとるやろ！！
智子 あ、ちゃうわ、行かれへん。
大樹 なんで？
智子 真琴が補習してるん。明日世界史ノート提出やん、真琴ノートとって無いらしいから貸してあげな。
冬悟 そんなん、ノートとってない真琴が悪いやん、ほっときーや
智子 まぁ、そーやねんけどな、来年から真琴がいなかったら、寂しいやん。
姉 あんたら一緒待ったりーや、
泉美 ガスト！
姉 図々しいなお前は！！
裕羽 補習そんな時間かからんやろ。一緒にまったろーや、
泉美 苺フェアー…。
裕羽 いいで、俺一緒に待つから、みんな行ってきーや
穂香 ゆっ、ゆうくんが待つならあたしも一緒に待つ！！
裕羽 穂香ちゃん。
智子 いーで、あたし一人で待てるし、そんな時間かからんやろーし
穂香 って思たけど智ちゃんもこう言うてるし。向こうで待ったら？
裕羽 そう、やな。
穂香 うん。
泉美 はよ行かな、時間なくなるで。
姉 ほな、行こか、まこちゃん来たら、後で一緒においでよ、
智子 うん、ありがと。
姉 よっしゃ行くで！
泉美 やった！ 苺フェア！！
姉 いや、奢るとは言ってないからな、
泉美 けちー
冬悟 けちー
大樹 二段腹ー
姉 おまっ！だまっとったらばれへん事を…！
はけていくみんなを見てなんか切なくなる智子。少し薄暗くなる照明。
取り出したのは世界史ノート。行きたかったな、ガスト…。裕羽くん、
待ってくれる言うたのに行ってまうし。あ、あたしが一人で待つ言うたんか。
ふと背後に気配を感じて振り返る。
智子 遅かったやン。まこｔ…。
誰もいない。ロッカーを叩いたら予想外に大きな音してびっくり。言葉に出来ない
苛立ちを背負った智子の背中を映しながらはかなく消えて行く照明。
『ぼちぼち文化祭』
日にち変更。文化祭が近くなっている。いつめんだけど穂香と裕羽の姿はない。
真琴 ちょちょちょ聞いてぇや。まじありえん。
智子 あたしらの意見総無視で文化祭のクラスの出しもんダンスやで。
大・冬 ウチ模擬店。
泉美 うちも！
真琴 ＳＫＥ４８とかふざけてる！
冬悟 別にふざけてはないと思うけど･…。
大樹 いや、ＡＫＢぱくるとかありえん。
泉美 そういう意味か？
真琴 自分らが良ければそれでいいねんでやつらは！ 勝手に「青空片思い」しとけって。
姉 あんたらも同類やろ？
なんか予期せぬところから大ちゃん姉登場。平台の下とか。
大樹 うそやん。
姉 知ってた？ ここ下の階段と繋がってるん。（一回書いたら責任もって使えよ、メルト）
泉美 知らなんだ。
真琴 ねぇちゃんクラス何するん？
姉 あんたらとおそろいよ、ダンス☆ 今更ゴリエ。ふるない？
真琴 主役？
姉 ちゃうわ！
智子 練習行きーや
姉 なんかー出たい奴だけ出るねんてさーねぇちゃんめんどいからパス
真琴 いいなー。
姉 いいことないわ。女子委員長とその愉快な仲間達だけ仲良しこよしで美味しいとこ全部もってくんやから。
泉美 あーあるなそれ！
姉 ウチラめっちゃ仲よし☆３１こ１☆あげぽよ☆みたいなよー。お前と話したこともないっつーの。
泉美 泉美も中学んときゆーてたで！最狂６姫１☆って。さいきょうのきょうは狂うで、６こ１のこは姫なん。
智子 あたし前髪ピンしてた！ こーゆーの！
女子 流行ったー！
冬悟 俺ぷーじゃが世界で一番かっこいいと思ってた
泉美 それ泉美も思ってた！
真琴 うちもばりばりおもてた。
姉 ねぇちゃんなんかプージャで大阪遊びに行ったりしとったで。どや顔で。
大樹 なつかしー中学戻りてぇー。
真琴 中学の文化祭は楽しかった気がする。
泉美 えー楽しなかったー泉美、女委員長と喧嘩ばっかしてたもん。
大樹 中学の泉美はファンキーやったもんな。
泉美 合唱コンとかさーちょっと、この子泣いちゃったやん、泣かせて楽しいん？ 真面目にやってよ！ って。
冬悟 おるおるーーーー
泉美 泉美いつもさぼってたからよく怒られたー
委員長 ほんまいい加減にして！
泉美 そうそう、こんな感じ。うわぁお！！
いつの間にか階段を上がってくる委員長。とっさにみんなの影に隠れる真琴と智子。
もう遅いんだけどね。
委員長 みんな真面目にやってんのに、何さぼってんの？
真琴 いやーさぼってるとゆー訳では…。
委員長 あ？
智子 さぼってましたさーせん。
委員長 最優秀クラス賞とろうってみんなで言ったやん。
真琴 お前らが勝手に盛り上がってただけやろ？
委員長 は？
智子 言いましたさーせん。
泉美 なしてあの人あない怒ってんの？
大樹 文化祭。クラスの出し物智子と真琴が練習いかんかったから、ちゃう？
冬悟 えらい熱心な委員長やな
泉美 女子委員長によくあるタイプー？
委員長 なにしてんのか思ったらこんなとこでぐだぐだたまってさ、なに？ 真面目にやらんのがかっこいいとでも
思ってるわけ？
冬悟 うわ、出たで、名言やな。
委員長 ほんまいい加減にして、うちらの思い出壊す気？
真琴 いやいや、うちらにもやりたい事あるやん？ こっちの意見総無視？
智子 ごご、ごめんな、真琴もあたしも、ダンスとか苦手でさ、
委員長 苦手でも頑張ってる子おるし、自分らばっかり逃げんなって。
真琴 いい加減に…。
智子 真琴。
真琴 智ちゃん、こんな言い方されて黙ってられるん。おかしいわ。
智子 でもな。
委員長 納田さん！別府さん！
真琴 何やねん。
智子 はい…。
委員長 ふざけてるんやったら帰って
智子 ごご、ごめんな、ここに用事あったから用事済ましてから行こおもたらおそなってもて…。まこちゃんはな、
うちの付き添い。
真琴 とも…。
委員長 こんなとこになんの用事？
智子 えっとーあのーそのぉお…。
委員長 ないんやろ！
ロッカーに張ってあるピストルズのポスターに手をつく委員長
泉美 しどぉお！
委員長 まじでさーそうゆーの、社会に出たら通用せーへんで
大樹 何目線やねん
委員長 こんなふざけたポスターなんかはってさ、不良気取り？こんなとこにたまってるのがかっこいいとでも？
泉美 ふざけてへんわ！
大樹 泉美！ ハウス！
委員長 ぜんっぜんかっこよくなんかないで、ださいで、早く気づきーや
真琴 こっちの台詞…
委員長 は？
智子 そその通りやんな、ださいださい。
委員長 ほんま、あんたらのせいで何人に迷惑かかってるか考えて！
真琴 こっちの台詞じゃ
委員長 あ？
智子 琴ぉお
泉美 まこりんおこっとるな
真琴 お前らがうちらの話聞かんとかってにダンスとかふざけたことぬかしやがって。
智子 違うねん！ 違うねん！ 真琴な、帰国子女でな！
男子 はーはん？
真琴 自分らが楽しければいーんか
智子 これ、真琴が留学してた国の言葉やねん！！
真琴 しゃしゃんなよ不細工。
男子 わぉ。
智子 物凄い反省してるから許して、明日からは真面目に行くよって意味やねん…！
委員長 自分らが言わんから悪いんやん。
真琴 お前らが聞かんかったんやろ。
委員長 言ってくれたらきいたやん…。
真琴 ゆーたがなお前がきいてへんかったんやろ、不細工が調子のんなよ。
委員長 あんたに不細工言われたくないわ不細工！
真琴 お前よりましじゃ、あれやからな、お前不細工ランキング６位やからな、うちは８位じゃ
泉美 まさしく醜い女の争いやな。
冬悟 それどゆ意味で言ってる…？
委員長 ちょっと！そこの人ら友達やろ、なんかゆーたりーや！
冬悟 いやー本人の自由やん？
泉美 とりあえずシドから手を放して下さいお願いします。
大樹 やりたくない事勝手に決められてもなー。
姉 みんなの意見を取り入れてこそ委員長よー。
委員長 あぁ？
冬悟 まぁ、練習行かんのも、
大樹 悪いとは思うけど…。
委員長 わけ分らん、友達も友達やな。
真琴 お前が張り切りすぎなんじゃ。
委員長 りんごは１つ腐ったらみんな腐っていくねん！
泉美 みかんちゃうのん。
委員長 こんなとこおったらこっちまで腐りそうやわ。
真琴 もう腐ってますー。
委員長 もういい、あんたらみたいなあほ相手にしてる暇ないねん。
真琴 なら最初からくんなよな…。
委員長 ここで腐っていけばいいんや、この事は先生に言っとくから。内申点下げられろ！
真琴 お前のスカートの方が内申点下げられろ！
委員長 これは衣装じゃ！ ぼけ！
ミニスカ翻しピストルズのポスター破り捨てはけていく委員長
泉美 しどぅーーーーー！！！！！！！
大樹 シドちょっとだけのこってるやん。
泉美 だいちゃぁん…。
智子 もっと穏便にいこーよまこっさん。
真琴 あれで黙ってられる！？
泉美 ほんまに許されへん。マジ許されへん。ほんま、ほんっま。
真琴 やろー。
泉美 ｏｈ！じょにー…すてーぶ…ぽーる…しどぉおおおおおおお！！
冬悟 なんか典型的な女子委員長って感じやったな。
姉 まぁ、いいやん。あたしなんかないものとして考えられてるからな、
真琴 そのほうが楽やーん。
姉 それも寂しいねんで。
泉美 そゆ問題ちゃう！
姉 クラスがさー知らん間に回ってんの。
智子 うちらもそんなもんやけどな。
姉 ねぇちゃんらなんか３年やしな、さいごやしよ。
冬悟 最後やおもたら寂しいな、
先生 納田ぁあ別府ぅう。
全員ぴくりと反応。
全員 おーまえ、ごっど。
真琴 くそう、もう追っ手がきやがったぜ！
智子 お前ら…俺らが帰ってくるまで死ぬなよな☆
フラグを立てて走り去るおふたがた。
先生 待てこるぁああ。
真琴 さーせーーん。
智子 さーせーーん。
みんなも苦笑い。スペシャルサンクス大前先生。
姉 待てこるぁああ、てか？
全員 さーせーーん。
げらげら笑いながら一斉に退場するみんな。人の不幸は蜜の味。暗転。
『道具製作中』
暗転の舞台に先生のありがたい説教だけが流れている。やがてなんや
妹たちの笑い声とともに明転。舞台には文化祭の出し物用大道具の
骨組み（未完成）。その脇でなんか布をちくちく縫ってる智子さんとまこりん。
それを見て大笑いの妹ズ
妹ズ だせぇえええ。
真琴 おい、裕羽のアホとぼけ大ちゃんどこやねん？
智子 １組と４組終礼長いよな。
ゆき なんか、なんか、ちくちくぬっとるぅう。
真琴 そこにうけてたん！？
智子 あれやん。なんか筆箱落とすだけでめっちゃ面白く感じた時期ってあったやん。そゆ時期やねんって。
みき 先生から逃げ切れへんかったんやろー
妹ズ だせぇええ。
真琴 そんなん言うんやったらいっぺん逃げ切ってみい。
智子 地の果てまで追ってくんねんで。
妹ズ でも、だせぇええ。
真琴 刺すぞ。
妹ズ 刺してみろー。
真琴 よっしゃなめんなよ。
リアル鬼ごっこ。
智子 １年合唱コンの練習行かんの？
みき なんか今日練習ないねん。なんかの会議？
ゆき だから暇やから来てあげた。
みき だからって手伝うとは決めてへんけどな。
真琴 よっしゃ捕まえた。いらん！ 帰れ！
みき ひぎゃぁあああ。
ゆき みきぃ！
なんか馬乗り？とかなって怪しいとこに大ちゃんと冬悟登場。
冬悟 大樹、あれ！
大樹 お兄ちゃんは悲しい！
みき は？
大樹 おにいちゃんは、みきがそんなんでかなしいんちゃうで、
智子 血は争えんな。
大樹 なんで黙ってたん、家族やろ。
真琴 突っ込むんめんどくさい。
大樹 幸せにしたってな。
真琴 とりまこいつらどうにかしろ、めっちゃうざい。
冬悟 おまえら練習は？
ゆき 今日ないねん。
大樹 ほなこの、世にもかわいそうな姉ちゃんらの手伝いしたれや。きっと泣いて喜ぶから。
妹ズ ほーい。
真琴 いらん！ 帰れ！！
ゆき あ、破れた。
真琴 帰れぇえええ。
泉美 ふふふーんふーんふーん、やぁ、こんにちは皆の衆！
なんか御機嫌のいずみーるが現れた。
真琴 なんかウざいの増えたー。
泉美 見て、みて大ちゃんよー、あ、みきちゃん、ゆきちゃん、ちす！
妹ズ ちっす！
泉美 パンクロックムービーズ！セックスピストルズ！！
大樹 おおーいーなー。
みき いいなー！
ゆき そんなひわいな単語学校で発するなよ。
泉美 分ってないなーゆきちん。
真琴 分ったから手伝ってやー。
泉美 ふふふ、デーブイデーを自慢するのが大半やったけど、そのためにも来たってん、泉美こー見えて器用
やねんぞぉ。
いそいで縫おうとする泉美ちゃん。
智子 泉美ちゃん、裁縫できるん？
大樹 いや、これが意外とな。ステージ衣装とかちょこちょこ作りまんねんな。
冬悟 へぇ～。
妹’ｓ 尊敬。
真琴 知らんかった。
泉美 あふれ出る才能を隠しきれんのだじょ。（地味に指差す）いてぇ！
智子 器用ちゃうかったん…。
泉美 あ、血、あふれ出てきた。
大樹 舐めとけ。ほんでこっちは？
智子 ダンスのセット。うちらにこんなん作れる訳ないのになぁ。
真琴 智子がやります言うたからやろ？
智子 ごめん。
真琴 ま、あの場を逃れるにゃな、
冬悟 手伝ったろか、これ。
智子 ほんま？
冬悟 どうせ暇やし。なぁ大樹。
大樹 しゃあないな。設計図は？
真琴 これ。（ぺらっぺらのわら半紙を差し出す）
大・冬 （設計図を確認して）ん～、意味なし。適当にやんで。
ゆき ゆきも、手伝う。
みき みきも。
冬悟 ほな、あの木、もっといで。
妹’ｓ ほ～い。
みんなで仲良くちくちくすーぱーお裁縫タイムをたのしんでるとやってくる理系組。
ゆき あ、おにいちゃん。
裕羽 よ。
穂香 おおーがんばっとるねー
裕羽 昨日は災難やったなー
真琴 ほんまーなんで高木が担任なんやろ。めっちゃめんどくさい。
智子 おまえら、青春は１回しかこーへんねん分るか？
真琴 それをな、そうやって頑張ることかからにげたらもったいない
智子 汗をかけ若人！
真琴 これ、２時間な。
穂香 拷問やね。
智子 で、結局ＳＫＥの衣装５人分と、舞台セット作れってゆー。
裕羽 まぁよかったやん、結局ダンス。でんでよくなったんやろ？
真琴 よくなったけどよーなんで舞台の飾りなんぞつくらなあかんわけよ。
智子 おまえらの気持ちはよーく分かった、だからせめて、裏方として、汗をかこうじゃないか。
真琴 ダイエッターか！
泉美 まぁいいやん、楽しいやん、泉美もう飽きてきたけど。
大樹 はやっ！ そこは頑張れよ。
冬悟 俺らなんか見てみ。その大道具、作ったってんねんぞ。
穂香 それが舞台セット？
裕羽 手伝おか？
智子 ありがとう。
真琴 涙が止まりません。だぁ～～。
裕羽 で、設計図は？
大樹 無い、あったけど無い方がましなやつな。
冬悟 んで適当にやってんねん。
裕羽 あかんって。そんなん。オレの理系としての魂が許さへん。どれ？
大・冬 それ。
床に落ちてるわら半紙。
裕羽 ノー。オレが描く！
泉美 お、火が点いた。ええの？
真琴 ええんちゃう。
裕羽は一角の机で鬼のように装置の設計図を描き始める。
穂香 裕羽、おもろい。
裕羽 おい、設計終わるまで下手に触るな。
冬悟 へいへい。
大樹 何者？ あいつ。
智子 てかみんなクラスの出し物、練習とかいいん？
大樹 俺らのクラス模擬店やから当日まで大した準備ないねん。
冬悟 たこ焼き焼くから来てな。
泉美 大ちゃんが作ったもんなんか食べたくないわ！ そんなんより泉美のとこのかき氷食べにおいでよ。
ゆき 行く。
みき ちょっとおまけしてな。
泉美 任して。
妹’ｓ えへへ。
冬悟 お前らも模擬店なん？
泉美 打倒４組で頑張るねん。
穂香 あたしらも展示やから、個人で鶴折って、前日に繋げて大きい鶴にするねん。設計は…
裕羽 （しゅたっと手を挙げ）オレが。
真琴 かっけぇ。
その時大樹と冬悟のケータイに同着メール。
冬悟 なんやなんや？
大樹 あ、トミーから。（メールを読む）緊急告知。たこ焼き試作完了。
冬悟 今から物理実験室で大試食会。
大樹 ダッシュで集合すべし…。やって。
妹’ｓ ダッシュで行く！（駆け出す）
大樹 おい、みき！ ゆきちゃん！
泉美 試食ぅ。
大樹 お前は敵じゃ、来るな。
泉美 打倒とか言わへんから食わせろ。
真琴 ウチも行く！ 穂香、行こうぜ。
穂香 うん。
智子 ちょっとぉ。
大樹 誰もお前らに食わす言うてへんからな。
冬悟 待ちなさい！
あっという間に全てほっぽらかして出て行くみんな。嵐の後の静けさ。残されたのは
智子と設計チーフ？の裕羽。
『平気だけど平気じゃない』
智子 行ってもた。
裕羽 （てきぱき動きながら）あいつらうっさいからちょうどええ。
智子 裕羽は？ 行かへんの？
裕羽 オレ、タコ嫌い。
智子 へぇ～、変わっとる。
裕羽 軟体動物目頭足綱やで。あいつら頭から足、生えてんねん。しかも８本。だぁ～って。
智子 うそん。
裕羽 うそんちゃうで。他にもえび、カニとか人間の食うもんちゃうから。
智子 何で？
裕羽 だって甲殻類やん。ダンゴムシの親戚ですやん。
智子 やめて～～。裕羽のアホ。当分エビフライ食べられへん。
裕羽 あ、ごめん。よし！
智子 カニクリームコロッケとか、どうしよ。
裕羽 もしもし。
智子 これ一段落したらたこ焼き試食行こ思てたのにぃ。頭から足、だぁ～とか。ちょっとまって、じゃここ
（自分の腰を指す）からは何が生えてんの？
裕羽 もしもし、智、智。
智子 何よ！
裕羽 設計図。出来たで。
見ると裕羽が設計図を智子に見えるように持ち上げている。ルーズリーフに
物さして引いた綺麗な線。駆け寄って真剣に見る智子。
智子 すごい。
裕羽 でもないで。急いで描いたから。
智子 いやいや、とてもそう見えへん。ここは？
裕羽 強度出さなあかんから斜めに木、入れてんねん。その布、掛けんねやろ。ちょうど隠れるから。
智子 すごい。下んとこは？
裕羽 こっちは布がないから、客から見えにくいように横向きじゃなく縦に斜めの木、入れてんねん。角度ちょっとむずいけど３対４対５の三角比でサイズ測ったら作りやすいやろ？
智子 ひょえ～、分からん。
裕羽 なんで？
智子 だって分からんもん。でもええ。尊敬した。ありがとう。ごめんなアホとか言うて。
裕羽 どういたしましダァ～。
智子 助かりましダァ～。
二人とも頭から足が生えた状態で礼。礼をしたまま智子は聞く
智子 なぁ、なんで裕羽はそんな優しいん？
裕羽 え？ そうか？
智子 そう。
裕羽 友達やん。連れ。
智子 …ともだちか。
裕羽 うん。
智子 友達ってええな。
裕羽 ええな。
智子 （やっと起き上がる）学校しんどくてやな事あって、なんで毎日来てんやろって思うときもあるけど、友達
おるから来んねんな。
裕羽 かもな。大樹とか、冬悟とか、ええ加減な奴ばっかやけど、不思議におったら安心するし。
智子 分かる。真琴とかほんまええ加減にしいやとか思うけど、おらんようになったら寂しいもん。学校来る意味、
減ってまうもん。
裕羽 あれ？
智子 何？
裕羽 いっつも真琴が智子に依存してる思てたのに、智子も真琴依存症なん？
智子 ホンマや。あたしも依存してるんかな。いややわ。
裕羽 別にええやん。みんなどっかで誰かを支えてるし、誰かに支えてもらってんねんて。
智子 今日は裕羽に支えてもろた。
裕羽 支えたった。
智子 なあ、裕羽。３年なっても、卒業しても、もっと大っきなっても、みんなこんな感じで、居たい思わへん？
裕羽 え？ そんなん考えたことないわ。
智子 嫌なん？
裕羽 嫌ちゃうよ。みんなでおるんが当たり前やと思ってンのかな。
智子 何となく集まって、そんだけで安心できて、何となく同じとこ目指して、並んだり抜かれたり、追い越したり
しながら歩いて行くねん。時々振り返って誰かの顔見たり、手つないだり、離したり。
裕羽 そんな感じやな。
智子 そんな感じ。
智子は裕羽に気になっていたことを尋ねてみる。
智子 なあ、裕羽、突然おらんようにならんとってな。
裕羽 おらんようにって？
智子 みんなで歩いてたと思たら、突然誰かと二人っきりで別の道、行ってまうとか、ええねんけど、その方が幸せ
やったらしゃあないけど、やっぱ寂しいから。
裕羽 誰かって？
智子 穂香。
どきっとする裕羽。何か言わなあかんって思うけど、言葉が出ない。それくらいのドキ。
明かりまで変化するような空気感。
裕羽 …行かへんよ。（間）
智子 ほんま？（間）
裕羽 当たり前やん。（間）約束する、し。
窒息しそうな世界にやっと空気が戻る。
つづく…
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