作り物

　作り物士検定　

　この検定は、大道具を製作するにあたって要求される基本的な技能を検定します。こんな大道具が欲しいけど、女の子ばかりで自信がないとか、人数がいないからあきらめようという学校も多いと思います。でもこれがどうしても欲しいという大道具があれば,作れた方がいいに決まってますよね。そんな時に備えて,各学校に何人かはこの検定に挑戦することを薦めます。恐れずにやってみれば、意外と簡単かもしれませんよ。

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　釘　士　

基本編
　釘士とは、釘に始まり釘に終わる。そう断言できます。たかが釘ですが、久々に打って見ると何か違うということを最発見します。曲がらずに打てればそれでいいというわけではないのです。まずは釘のサイズからお勉強してください。舞台で使う釘は基本的に次の3種類があります。

使用機材

25mm釘（ニイハン）
　その名の通り全長25mmのクギ。世の中にはこれ以上小さいクギもいくらでもあるのですが、打ちにくく、さらに大問題は抜きにくいのでばらすことを前提にした舞台ではまず使いません。ベニヤ板を角材に打ちつける際に使用します。

45mm釘（ヨンハン）
　中間的サイズのクギ。全長45mm。使用頻度は一番低いです。理由は寸角(3.03cm)に打ちつけた時にある時は長過ぎある時には短すぎるからです。じゃ、どんな時に使うかですが、25mmでは短過ぎ、65mmでは長すぎる時に使用します。詳しくは右側で。

65mm（ロクハン）
　一番長いクギ。これ以上のものはまず必要無いでしょう。65mmなら寸角ﾄ同士を確実に止められます。ただし、それだけ打ちこむのが難しく、曲げてしまうことも多いかも。抜くときにもちょっとしたコツが必要になります。

常備する釘３種類
上から65mm、45mm、25mm釘

なぐり
　金づちをこう呼んでいる人も多いですが、正確にはハコヤゲンノウという名前の商品がなぐり。ただし高校生はこだわる必要無しです。経験上とってが抜けなくて、反対側にくぎ抜きが付いたものが一番使いやすいです。

バール(くぎ抜き)
　たとえなぐりの反対側にくぎ抜きが付いていても単独で欲しいものがバール。ばらしにはスピードが要求されますし、なぐりとバールを2つセットで使うことも必要だからです。

お勧めセット
理想的なお手軽なぐりとバール

基本技能

なにはともあれクギ選び

　つきぬけてはいけないクギですが、角材同士を確実に止めるには相手側に確実に届くクギを使わなければなりません。物理的に説明しましょう。

◆釘の先端は摩擦力が弱い◆
　釘の先端は斜めになっています。木材に食い込んで行くためには尖っていないといけません。しかし、斜めになっているということは抜ける方向には引っかかりが無いということなのです。検定で「いけません」の代表は45mm釘で寸角を止めることです。図に書くと次のようになります。分かってもらえましたか？

寸角の結合は65mmが基本

◆回転を防ぐところは２本打ち◆
　釘は丸いですから１本だとくるくる回ってしまいます。寸角が回転してはまずいところは２本打ちをしましょう。慣れてくればさらにナナメに打ちこんで抜けにくくすることも出来ます。

◆叩き込む回数は出来るだけ少なく◆
　25mmぐらいの釘を打ちこむのに10回も20回もなぐりでクギをたたいている人を見かけます。しかしこれでは時間がかかるばかりかクギ自体も抜けやすくなってしまいます。何度も抜いたり刺したりしたクギ穴はバカになるでしょう。それと同じ現象が起こってしまうのです。25mmなら４回程度で、65mmなら８回程度では打ち込みたいところです。

３級検定課題
　初級に当る３級検定。小さな作品ですが、クギを使う基礎がこの課題には詰まっています。この検定を受ける人は各自、使いなれたなぐりを持参することが必要です。

３級検定課題

　すでに切ってある寸角、ベニヤ板を使って、右の図に示されているクギ皿を作りなさい。必要なクギは自分で選んで使用すること。なお、制限時間は８分です。

検定募集人数　３０名

【アドバイズ】
　大きなクギは立てて打った方が打ちやすいと思います。角度で90度が出ているかどうかは、ベニヤ板を基準にするといいでしょう。

２級検定課題
　中級は大きなものを作る課題。立てた状態で釘打ちが出来ないような大きなものを作るには、ちょっとしたコツが必要です。この検定を受ける人は各自、使いなれたなぐりを持参することが必要です。

２級検定課題A

　すでに切ってある寸角、ベニヤ板を使って、右の図に示されているパネルを作りなさい。必要なクギは自分で選んで使用すること。なお、定員は２～３名、制限時間は12分です。

検定募集人数　６組

【アドバイズ】
　ここまで大きなものは立てて打てないと思います。必然的に寝かせて打つことになりますが、体重を有効に使うことが必要です。わくだけ先に作るとベニヤにあっているかどうか不安なので、ベニヤ板にわくを合わせて作る必要があります

応用編　この検定で得た技術をいかにコンクールに役立てるか。

　建て士　

基本編
　作ってきた舞台装置を劇場に設置することを建て込みと言います。今回はこの中からパネル状の舞台装置を舞台で立てる技術を検定します。主な技術は、パネルを結合することと、結合したパネルを補強し、立てることです。この技術をマスターすれば、家の中や教室を自分たちで作れるようになります。

パネル同士の結合
　パネル同士を結合させるには、骨になっている寸角同士をひっつけた上でクギ打ちします。パネル同士を「ぬう」と言ったりしますが、糸がないだけで本当にぬっている感じです。ぬう時に使うクギは65mm、クギの頭はばらす時のことを考えて全部打ち込まないのが基本です。パネル２枚を寝かせたら、動かないようにその上に乗り、クギを下の図のように打ち込んでみましょう。

人形立てで立てる
　結合し、補強したパネルを立てるためには、人形立てを使います。寸角を利用した三角形の道具です。斜めに角材を切る技術はいりますが、文化祭用に,各学校で作っておくことを薦めます。パネルの裏に、図のように取り付ければ、パネルを舞台上の好きなところに立てることが出来ます。

人形立ての使い方

３級検定課題
　初級に当る３級検定。３×６パネル２枚を縫い合わせて人形立てで舞台上に建てます。使うクギの選択と、縫い合わせの技術、さらに人形立ての使い方を検定します。２～３人一組で制限時間は３分です。なお、この検定を受ける人は各自、使いなれたなぐりを持参することが必要です。

２級検定課題
　中級はやや大きなものを建てる課題。３×６パネル３枚を縫い合わせて人形立てで舞台上に建てます。パネル１枚分大きなものを建てるだけなのですが、強度が必要になるためヌキ板を使用してもらいます。２～３人一組で制限時間は６分です。なお、この検定を受ける人は各自、使いなれたなぐりとのこぎりを持参することが必要です。

応用編
　この検定で得た技術をいかにコンクールに役立てるか。

室内劇には壁がいる？
　答はNoです。引き割幕を壁に見立てるとか、全く無しでもそのままやってしまうなどの方法があります。しかし、リアルな劇をしようと思えば壁は必要になります。食器や机などの小道具がリアルなら、壁や窓などの大道具だけ無対象なのは統一が取れません。他の学校の劇やプロのお芝居を見るときには、どのあたりでバランスを取って省略しているかに注目して見ると、とても勉強になります。

高さの効果
　ベニヤ板のサイズである６尺（約１８０cm）の高さは舞台上で見ると意外と低く見えます。やはり壁としての存在感を出すためには９尺は欲しいものです。舞台装置が実際の劇場でどの様に見えるかは、やはり正確な縮尺の図面を書いてみなければ分かりません。高いほど効果的なのはいいとして,作る手間,運ぶ手間,お金の問題などもありますから、最小の努力で最大の効果を生むように工夫が必要です。

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